憧れの街、新宿を離れてみる

長らく愛していた新宿を離れることになった。

小田急線沿いの世田谷区で生まれて以来、小田急沿線で青年期までのしばらくを過ごしてきた自分にとって、新宿は都会のシンボルであり続けてきた。きらびやかで憧れの街。歌舞伎町にゴールデン街新宿二丁目にコリアンタウン。表も裏も、日本もアジアもなんでもある街。ここ数年は新宿のどまんなかに住んでいたから、夜の歌舞伎町を“ただの日常通路”として使いこなした。それでもビルに入ったら何が起きるのか、知見はまだ限定的だ。

ことし30歳を迎えた。とたんに、まわりから“ちゃんとしたいひと”と見られることに頓着しなくなった。心当たりは少なくない。雑な恋愛をした。下衆なものを飲み込む程度には食えるようになった。そういえばストレスもけっこう積まれてた気もする。結果として、好きなコンテンツについて一切の遠慮無く話しつづけることへの抵抗が薄らいでいる。この歳になってしまえば、こういうことに対しては心に正直なほうが、むしろモテたりもするのだろう。

新宿を離れたのは精神状況の変化とは実は全く関係ない。ただ、言葉を綴ることを始めるにはよい機会だ。移り先は千代田区外神田。秋葉原区域である。外国人がいっぱいいるのは新宿と同じ。B級メシが多いところもなんとなく似ている。ホテル街の近さも、かな。

秋葉原もなんだかんだいって10年来通っている街で、実は近辺に住んでいたこともあるのだから何も特別なことはないのだけれども、わたしはこの街で、すきなものを愛する気持ちに素直になって生きてみたい。